私の本の読み方 13.阿倍仲麻呂 くもをさがす ずっとそこにいるつもり
2024年1月25日
「ふりさけ見れば 上・下」 安部竜太郎著 上下合わせて 899pの大著である。表題は百人一首で有名な「天の原ふりさけ見れば春日なる・・・」の阿倍仲麻呂と、同じ時期に唐に渡った吉備真備らを主人公とした小説である。二人が遣唐使として長安で学問をし、仲麻呂は才能を伸ばして玄宗皇帝に仕える。次の遣唐使来唐の時、仲麻呂は密命を帯びて唐に留まる。真備は帰国し、倭で藤原仲麻呂の専横と戦う。仲麻呂は唐で任務を遂げるが、最後は玄宗に従う・・・、と言った粗筋である。話の中に、唐の玄宗、王維、楊貴妃、安禄山、そして倭(大和)では天智天皇から聖武天皇に至る歴代天皇、藤原仲麻呂、東大寺の良弁など(ほかにも有名人物てんこ盛り)が登場して、賑やかなフィクションである。フィクションとはいえ、両国の様子や遣唐使の仕組みが良く分かって楽しかった。あんな昔に東シナ海を乗り切って定期的に唐に渡っていたことは素晴らしい、冬は季節風を利用して唐へ、夏は黒潮に乗って倭に来着する航海方はすでに見出されていた。勉強になるので、読むといいです。
2人の女性作家の本です。「くもをさがす」西加奈子著 最近西さんの著書の宣伝を良く見ますが、多作の40歳台後半の作家です。カナダのバンクーバーで乳癌にかかり、化学僚法、放射線治療、手術を乗り切ります。その間の様々な出来事と気持ちの変化、カナダにおける医療事情の日本との差異、友人の手助け・・・、目が離せません。それにしても、西の友人の多さにびっくり。うらやましいような、これほど多いと煩わしいような・・・。 「ずっと そこに いる つもり」小矢永塔子著 新聞の書評で「面白い」と書いてあったので、読みました。全5部の短編で出来ています。語られるエピソードはさほど深刻なものではないし、ハッピーエンドとは言えないものの、ほっとする結末なので安心して読めます。
上記 2冊は、暇なとき寝転がってって読むには丁度よいブックレットである。厚さ、大きさ、手軽さ・・・三拍子揃っている。最近、読み応えのある本ばかり読んでいて、ちょっと食傷気味だったので丁度良かった。他の本を追い越して、先に読んでしまった。