私の本 59. カフネ
2025年6月15日
「カフネ」阿部暁子著 講談 「カフネ」とは、愛しい人の髪の毛に指を絡ませるしぐさを言う。二人の女性(薫子とせつな)が主人公で、薫子の弟でせつなの恋人(春彦)が突然死する。薫子は人工授精が不成功で、それが遠因で夫と離婚する。二人の女性は困った人の手助け(食事を作り部屋を片付ける)をしている。終盤、薫子はせつなが抱えているトラブル(病気)の対応にのめり込んでいく。せつなは始めは拒否するガ薫子はお構いなしに介入していくうちに、せつなが心を開いていく様子が描かれている。薫子の普通なら押し付けがましい行動は、薫子自身に満足感を生じさせ、そして、せつなはいつの間にか受け入れているのだ。
私はこの本を読んで、我々医療人の日常の診療を思い浮かべた。いま私の仕事は、主に第2診察室で年寄りの患者さんと会話を楽しんでいる。第1診察では主に病気の治療が目的なのだが、、第2診察室では患者さんの日常を聞き出すことが仕事だ。 ゆっくり時間をかけて患者さんと話し、「今日はゆっくり先生と話ができて良かった」と言って帰っていく。私は患者さんから、仕事のことや、家庭のことなどいろいろ聞けて満足する。まさに「医者冥利に尽きる」時間だ。私は、普段からカフネをやっている。