徒然なるままに74. 新聞を読んで・その18 ヤマカガシ
2024年7月15日
ヤマカガシに噛まれた話は、以前「実験室ブログ」に書きました。高校の頃ヤマカガシに噛まれたが、、無事だったと言う内容です。毒牙のある奥歯ではなく、前歯で噛まれたので無事でした。ヘビの独(蛇毒)が全身に回って、重症になると命にかかわります。メカニズムは「フィブリノーゲンが測定できなくなる」「出血を止める機能が失われる」「出血で死ぬ」と書いてあります。詳しく、説明します。
その前に、ヒトの血液凝固、繊維素溶解(繊溶)現象について話します。ちょっと難しいけど、付き合ってください。(私の学位論文のテーマは、血液、凝固線溶現象のことでした) 血管内で血液が固まるのは、フィブリノーゲンが関与する場合と、血小板が関与する場合がありますが、今回はフィブリノーゲンの方です。蛇毒がフィブリノーゲンに作用すると、フィブリンに変化します。フィブリノーゲンは流動的(ゾル)ですが、フィブリンはキョトキョトのゲルです。毛細血管の中でつまって血液の流れを止めます。本来、この現象は何かの原因で、傷ができたりして血管から出血したとき、出血を止める生理的な現象です。ところが、蛇毒が体内に入ると全身の毛細血管の中でフィブリノーゲンがフィブリンに変わってしまいます。この現象を血管内凝固と呼びます。
全身の血管内で凝固が起こってしまうと、組織内の血流が途絶えてしまうので、ヒトの体は血管内のキョトキョト(ゲル) のフィブリンを解かそうとします。フィブリンはサラサラ(ゾル)のFDP(その代表がD-ダイマー) に変わって、再び血流は再開します。しかし、蛇毒は体内を回っているので、残ったフィブリノーゲンを活性化させて、フィブリンに変えます。この変化を限りなく続けると、やがて体内のフィヅリノーゲンが枯渇します。体内で出血すると止まりません。そのため、全身の血管、特に脳や眼底の血管で出血が起きて、重篤になるのです。一連の、この仕組みを播種性血管内凝固症候群(DIC) と呼びます。
記事、「フィブリノーゲンが測定できなくなる」のではなく、「極端に減少する」です。後の方はあっています。
蛇毒の作用を抑えるのが、中和抗体です。少量の蛇毒を馬に注射します。少しず注射していくと、馬の血液中に中和抗体ができます。だから、ヤマカガシに噛まれたら、ウマの血清を注射します。ウマの血清を打たれたヒトは治りますが、今度はウマの血清に対する抗体(アレルギー)ができるので、2回目は血清が使えません。(諦めるしかない!)
今日の話はちょっと難しかったけど、分かりましたか? このブログの著者、何時もくだらないことばかり書いていて、本当に医者かしら?と思われないように、アカデミックな内容にしました。