徒然なるままに 72. 水銀の話 1. | 市川内科医院のブログ│実験室

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徒然なるままに 72. 水銀の話 1.

2024年7月13日

eye  catch 画像は、左:体温計  右:最高最低温度計です。どちらにも水銀が使われていて、今は販売されていません。水銀を使っていて廃棄はできないので、専門の業者に引き取ってもらいます。今、アナログ温度計は赤く着色したアルコールが使われています。水銀の融点は -38.8 ℃ なので、寒冷地では使えません。しかし、水銀は純度の良い製品が得られやすいこと、熱膨張係数が適度であることから、正確な温度を測る体温計によく使われました。この体温計の特徴は、水銀溜の直上部が細くなっていて、体温計を体から放したとき、水銀柱が下がるのを防いでいます。   右の最高最低気温計は、うまい仕組みになっています。向かって左が最低気温測定、右が最高気温測定です。左右の棒の上端に透明のアルコール溜めがあります。左右のガラス棒の下端は  U  字形になっていて、内部は水銀柱でつながっています。気温が下がると、左の水銀柱が上方に上がって行って、小さな青色の鉄の針を押し上げていきます。気温が上がると左の鉄針はここに置き去りにされ、右の水銀柱が右の鉄針を押し上げます。すごくアナログな機械すが、昔は温室の気温測定などによく遣われました。

水銀とその化合物は、今から45年ほど前まで多用されました。古くから使われたのは、朱色の色素の辰砂(しんしゃ)です。成分名は硫化水銀(HgSo4)です 。 古代の装飾古墳の彩色、卜占、宗教行事で使われる朱色はたいてい辰砂です。辰砂の産地は丹生(にゅう)と呼ばれ、日本全国あちこちの丹生の地名があります。(長野県北部の中野周辺胃もあったらしい)     辰砂を加熱すると水銀蒸気が発生し、それを回収すると無機の水銀 (Hg) が得られます。水銀は金、銀などを解かし、柔らかい合金(アマルガム)を作ります。アマルガムはゆっくり水銀が蒸発して、金、銀が残ります。以前は歯の治療にこの手法が使われました。むかしは、金鉱山、銀鉱山の精錬でもこの手法が使われました。また、大仏の渡金などにも使われました。いずれの手技でも、大量の水銀蒸気を吸い込むので、かなりの犠牲者が出たと思います。昔から、水銀の毒性は知られていましたが、人類はそれに対して危機感を持たずに漫然と使用してきました。たかだか、50年前に漸く水銀の使用が止められたのでした。

水俣病シリーズでも出ましたが、アセチレンからアセトアルデヒドを作るとき、どうしても水銀触媒が必要です。アセチレンは石炭化学の申し子です。水俣病が社会問題になったころ、たまたま日本では炭鉱の閉山が相次ぎ、石炭の供給が徐々に困難になりました。この頃から安価な石油が海外から入って来るようになり、日本も石油化学工業にシフトすることが出来ました。石油に含まれるエチレンからアセトアルデヒドが大量に作られるようになりました。Web.site の情報では、中国では相変わらずい石炭は安価で供給できるので、アセチレン、水銀の呪縛から解放されていないそうです。(石炭はCO2排出に関しても不利です。石炭は燃えるとCO2しか出ませんが、石油はCO2とH2Oが出ます。おなじジエネルギーを得るたむには、石炭の方が CO2 の排出が多いのです。日本では、火力発電出に一部石炭発電が 使われています。一刻も早く撤退するべきです)

 

最近の私のブログは長すぎて読む気がしない、との指摘がありました。今回の話は、理屈っぽいので、今回はこの辺で止めます。続きはこの後のブログを読んで下さい。

 

 

 

 

 

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