新聞を読んで 29. 基礎研究をこつこつと・・・
2025年10月22日
今年のノーベル賞は、 生理学・医学賞と化学賞で2人の日本人が受賞しました。二人の方が共通して仰(おっしゃ)ることは、「基礎研究が大事なこと」、「一つのテーマをコツコツ研究すること」だそうです。そうなると、今の日本の状態を考えるとあと20年後には日本人のノーベル賞受賞者はいなくなるそうです。
私の拙い経験から、基礎研究の面白さをお話しします。医学部卒業後、大学の内科学教室で基礎研究をしていました。やりたかった研究は特になかったので、取りあえず教室の先輩に付いて生化学の実験をしていました。徐々に研究テーマが絞られてきて、血液の凝固・線溶現象について調べるようになりました。4年ほど研究して学位論文を書くことになりました。メインのテーマは大した結果がでなかったのですが何とかまとめました。ところが、サブでやっていた研究の結果がとても面白いのです。実験方法は私オリジナルのやり方でした。この結果に関してはは学位論文には書けませんでした。と言うのは、まず、そのオリジナルな検査方法は正しいかを検証して、それを学会に報告して初めて意味が出ます。その結果を学会誌に報告し、その論文はその道の権威に査読してもらって、初めて論文として掲載されるのです。時間的に、そこまでやり通せる 時間がありませんでした。教授の停年が迫っていて、私の学位審査はぎりぎりだったのです。
その様な慌ただしさの中で。私は教授退官に合わせて市中病院の勤務になりました。教室に帰るチャンスもあったのですが、もともと私は縛られるのが嫌いな性格で、大学の研究室勤務には耐えられず、そのまま市中病院に居ついてしまいました。私は、コツコツ研究するのは性(しょう)に会いません。