浅川ダムと台風9号の大水害 1.
2024年7月6日
院長ブログ 2024.6.16 「林道・安南平線を歩く」で、角間川ダムのことを取り上げた。2001年当時、建設の可否をめぐって論争になった浅川ダム調べたので紹介する。さらに、浅川ダム問題と関連のある、2019年10月の千曲川大洪水を検証する。 浅川下流域の長沼地区の住民は、長年浅川の内水氾濫に悩まされて来た。「浅川上流域にダムを造れば、大雨が降っても、ダムを湛水すれば浅川下流部に流れ込む川水は減少する」と言うのがダム建設推進派の意見であった。田中知事の諮問で設けられた「県治水利水等ダム建設検討委員会」は、「浅川流域の面積に対し、ダム建設予定地上流の流域面積が狭く、ダム建設の意味が薄い。ダム予定地の上流は凝灰岩地帯で、土盤が軟弱で土砂崩れしやすい。浅川上流には灌漑用のため池は多数作られていて、利水の効果が弱い」、等々の理由で、建設は否とされた。付け加えると浅川は土砂排出の多い河川で、私のレポートでもでも取り上げるが、平野部はかつては天井川で、長野市北部の水害常襲地帯でもあった。千曲川左岸の浅川最下流部は江戸時代は遊水地であったが、千曲川に築堤して遊水地を干拓して、徐々に圃場や集落が出来ていった。千曲川右岸、特に延徳田んぼと称される大遊水地は江戸時代に篠井川を開削して干拓して、大圃場を造営した。千曲川の水位と周辺の遊水地の水位は殆ど差がないので、千曲川に水が漬くと周囲の遊水地は洪水になる。千曲川周辺の集落は右岸と左岸で築堤を競って、抗争が尽きなかった。その間にも、江戸時代に起きた歴史に残る大水害として、「戌の満水」と、善光寺地震のさい犀川で起きた土砂崩の自然ダムの決壊による大洪水が知られる。
このように、複雑な歴史を抱えた浅川ダム建設であたが、田中知事が辞めた途端再びダム建設の機運が高まった。下流の住民の「もし、ダムを造らなかったとして、大規模な内水氾濫が起きたら、だれが責任を取るか?」と言う、ごり押しに近い意見に折れたのであった。ただ通常はダムは湛水せず、川水は常に放流する。大雨が降って浅川を流れる水量が増えたら、水門を閉ざしてダムに水をためる。つまり「穴開きダム」を作る、と言う折衷案で結末した。
浅川流域図である。緑色で囲まれて地域が浅川流域全体で、左のオレンジ色が浅川ダムが受ける流水域である。左上部に浅川の源頭である飯縄山である。浅川ダムの責任流域は全浅川流域の25%に満たない。飯縄山の麓に大座法師池、大池、猫又池のどの灌漑用ため池がある。恋コバルトブルーの腺は浅川の主流と支流である。
以下、浅川上流部から、浅川ダム、中流部、下流部と順に紹介する。地図上の番号と、写真の番号は一致している。
1.浅川水源の「鳴岩」である。(詳細は、2024.5.26 院長ブログ「休憩室」 植物、カラス、湧き水、電気、の真ん中より後ろを見て欲しい)
2.鳴岩から2㎞下流に大池がある。浅川上流にいくつかある灌漑用のため池の一つである。正面は飯縄山。大池は、私が所属した長野高校生物班の活動地点である。夏の合宿は正面に見える林の中にテントを張り、飲み水は鳴岩から流れる小川の水であった。大池に筏を浮かべ、何カ所の地点で、一日に数回調査した。水深5m位あり、それぞれの深さの湖水を採取するのである。実験の合間には足のつかない沖まで泳いでいったり、真夜中に眠気をこらえながら水中溶存酸素量を測定したり、思い出が尽きない。
3.大池堰堤下の灌漑用水路。田植えに時期には大量の用水がこの水路を流れる。
4.浅川ダムの堰堤上部から見た浅川上流域を望む。浅川ダムに流入する水域の全貌である。浅川ダムには、この狭い流域の雨水を集メルだけである。
5. 浅川ダム堰堤から、浅川上流域を望む。4.と同じ写真だが、こちらは縦位置である。ここに提示した写真は、湛水すればすべてダム湖であるが、果たして満水になったことはあるのだろうか?
6. 7. 湛水していれば、ここは水の中。ダム湖の深さは 53m である。
8. ダム堰堤上から下流方向を見下ろす。長野市外地が見える。
9. ダム本体を撮影した。大きいです。
10. 浅川ダム銘板。ダム高 53m、堤延長 165m、堤体積 143,000m3 総貯水量 1,100,000m3と書いてあります。
11. ダム下流部から見た浅川ダムの本体。もしこれが水力発電用のダムだったとしたら、かなりの高出力であっただろう。砂防堰堤だったら大きすぎる。
12. ダム下流部の河床。大量の放水にも耐えられるように、河床はコンクリートで固められている。
13. 少し下ると自然石の河床になる。
14. 見上げれば、真光寺ループ橋。
15.ダムから500m下流。真光寺ループ橋が見事なカーブを描く。
16.17. 橋の下は浅川の流れ。(すみません、同じ写真張り付けちゃった)
18. 浅川は、この辺りまで渓谷を流れる。
19. 浅川は平坦部に流れ込む。下流方向を望む。 水流は弱くなり、河床に土砂が貯まり始める。
20. 川幅が広がってきた。下流方向。
21. 上流方向を望む。徐々に川の傾斜が弱まる。
22. 檀田地区。西友が近くにある。この辺りから株は、以前は天井川だったが、今は河床を掘り込んで、洪水を防いでいる。
昔の浅川は、この辺の天井川の氾濫が最大の問題であった。それが解消されたら、最下流部の内水氾濫がにわかに注目されるようになった。
この項は、これで完了します。この先は次のブログに載せます。