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私の本 58. 進化人類学

2025年4月24日

旧人( 原人)から現世人に至る進化を骨形状やゲノム解析で解明する学問を、進化人類学と言う。始めに、本の表紙の文言をよく読んでから、以下の新聞のコピーと私の解説を読んで下さい。最後にこの本の読後感想を書きます。

最近、進化人類学の話題が多く聞かれるようになった。上記の新聞のコピーは進化人類学全般を解説したもので、とても良く分かるのでぜひ目を通して欲しい。

と、思ったら、骨のコラーゲン蛋白の分析で、台湾でもデニソワ人が住んでいたことが証明された。デニソワ人はネアンデルタール人などに近く、現世人に近い人種である。どちらも、日本人を含めた現世人と交雑した可能性があるという。ネアンデルタール人とは、ヨーロッパ人を除く全世界の現世人と交雑した可能性があることを報告したスバンテ・ペーボ博士がノーベル賞を受賞した。

 

「人類の祖先に会いに行く」グイド・バルブイアーニ著  全15章で旧人から現世人まで解説してある。進化人類学の新知見が、細かく述べられていて面白かった。圧巻だったのは、最終章でダーウィンを取り上げたことである。ダーウインが唱えた進化論は今でも世界の著名人が否定している。アメリカ大統領のブッシュ、ローマ教皇、枢機卿たちetc. である。  最近になって、旧人類の人骨ゲノム解析を行うことで、ダーウィンの進化論が正しいことが証明された。更に、全世界人を人種で区別することはできないとされた。  医学的見地から、民族と疾患は固有の傾向があるとされてきたが、そのようなことは無いそうだ。例えば、サラセミアと言う病気はあらゆる民族に発生するという。私が以前読んだ文献では、ヨーロッパ人にはサラセミアが少ないが、東南アジア人は多いという。サラセミアにかかったヒトの赤血球はマラリア原虫が感染にくいので、東南アジア人はマラリアで死ぬ人は少ないが、サラセミアによる溶血性貧血症は多いと読んだ。しかし、この本では否定している。人種間で、疾病の罹患率には変化がないという。(あるとすれば、その解析に何らかのバイアスがかかっているのだ。)  本書の結論は、「人種とは、人類の生物学的な差異を記述するための粗雑な尺度だったが、より信頼性が高い精妙な手段を科学が用いられるようになった時点で、その役割をおえた」 ダーウィンは今から150年前に進化論を表し、人種論を否定していた。現代のゲノム解析を行う前に、新知見を表したダーウインの先見性に脱帽する。

よく医者は疾患の特徴には人種間の差異があるという。たとえば欧米の糖尿病患者は肥満者が多いが、日本では痩せていても糖尿病になるとか・・・・、講演会の演者の先生は何かというと、そんな学説で聴衆の気を引きたがるが、これは誤りらしい。同族内でのゲノムの差異は85%なのに対して、異なった族では8%だという。(統計学的に見て、横にいる人同士でゲノム解析すると80%も差異があるの、書慣れていて異人種とされる集団間での差異は8%である) (異なった種間では、疾患の示す状況に差異が出ても不思議ではない。例えばウマとロバの子(交雑種 F1)はラバだが、交雑種と交雑種 F1×F1 間では、子F2はなさない。それゆえ、ウマとロバは異種である。しかし、同種間(例えば白人と黒人、あるいは欧米人と日本人)では交雑は普通に存在し、交雑者同士では子が生まれる。そえ故ホモサピエンスは全員同氏は同種人であり、弛緩の表現形に差異はないのだ。

ダーウインやリンネは150年も前に種の起源を決めた(発見)したのである。それを、今の医者は進化論を無視して人種間の差異をとくとくと論じているが、それは噴飯ものである。

ホモサピエンスとネアンデルタール人、ホモサピエンスとデニの間では交雑があったことは証明され、そのゲノムを我々は持っている。これほど異なった生命体でも生物学的には同種なのだ。もっとも、旧人(ネアンデルタール人、デニソワ人)と新人(ホモサピエンス)ぐらい離れていれば、疾患による表現形に差異があるかも知れない。

 

 

 

 

 

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