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私の本の読み方 7. 沢木耕太郎

2023年9月5日

 

信濃毎日新聞 2023.8.28  一面の下の広告です。今の出版界ではこの手の how to 物が全出版物の 1/3 を占めるほど目白押しです。私もたまに買って読むことはありますが、読んで満足したことは殆どありません。つまらないのです。それなら小説を読んだ方が面白いし役に立ちます。

 

 

そう思っていたら、こんなとぼけた書評が目に留まりました。朝日新聞 2023.8.26 横尾忠則は面白い人です。表紙のレイアウトをまねて、このような縦書き、横書き、逆向きの原稿を書いて、新聞社はそのまま載せています。笑いました。書評ではこの本を批判的?に評しているようですが、この書評自体が難解である。読解力のない私には、この書評を読んであえてこの本を買う気が起きない。 大体、書評を書く人は本を自分で選ぶのかなあ。それとも新聞社側が「この本の書評を書いてくれ」と依頼するものだろうか?何方か、知っている人がいたら教えてください。 ところで、上の文章を読むとき、スマホかタブレットの人は、ぐるぐる回しながら読んで下さい。PCの人はお生憎様です。   そのようなわけで、上記の2冊は、私は買いも読みもしませんでした。

 

 

 

姉から借りた本、全4冊   深夜特急 4 沢木耕太郎著 :全6冊のうちの後半部分である。この本の中で沢木はパキスタンからアフガニスタン、イランを旅する。その中で、イランが一番興味深かった。今、イランは大量破壊兵器を有する危険な国家として論じられるが、沢木の文章を読むとその認識は全く改められた。私たちは、アメリカがばらまいた誤ったイメージを信じらされていたようだ。沢木によれば、テヘランはこれまで旅した中で一番整然とした街であったそうだ。さらに、モスクでの礼拝の描写は興味深かった。他にも、実際に旅した人でなければ書けぬ記載は、沢木の独壇場である。イランの片田舎で、ジョージ・フォアマンとモハメッド・アリの世紀の対戦の実況中継を、偶然見た沢木はとても感銘したらしい。イスラム圏で見たアリの勝利を喜ぶイランの若者の喜びがうまく表現されていた。この経験を沢木は次に紹介する「春に散る」の主題に掲げていることも興味深い。 深夜特急 5 沢木耕太郎著 : 旅は、終末に近ずいてきた。トルコのイスタンブールでボスポラス海峡(フェリーで15分)を渡って、アジアからヨーロッパに渡る。アジア側、ヨーロッパ側の雰囲気ががかなり違うそうだ。トルコからギリシャに入って「これぞヨーロッパ」を味わいながら旅を続ける。ギリシャではペロポネソス半島経由でフェリーに乗り、イタリアに向かう。美しい地中海を堪能して船上でウイスキーのボトルを開けるうちに、不思議な女性と遭遇しする。そこで旅の目的(冒頭の目的論にまたもどってしまうが・・・)を探ることになる。そこで、沢木は「旅の目的は、ただ旅を続けることである」という結論する。以下、要約を記載する。  ・・長く異郷の地にいると、知らないうちに体の奥深い所に疲労が蓄積してしまう。疲労は好奇心を摩耗させ、外界に対し無関心にさせてしまう。旅の目的すら失い、ただ町から移動することだけが唯一の目的になってしまう。そして、ある街に定着してしまうと、そこに埋没してしまい抜け出せなくなる。それが一番危険なことである。世の中にはそんなことで身を滅ぼす(命を落とす)人がいるらしい。・・・    春に散る 上下  沢木耕太郎著  : 世界チャンピオンになれなかった主人公がアメリカでホテル王となり、日本に戻ってくる。昔の仲間4人と同じ家に住み、一人の若者をチャンピオンに仕立てるまでの、経緯を著したものである。沢木の著作にしては珍しくフィクションだが、読み応えがあった。この本の主題になるのは、深夜特急 4 でも取り上げられている、G・フォアマンとM・アリの試合の経過である。沢木には、この試合はよほど印象深かったらしい。  私はボクシングなんて単なる殴り合いかと思っていたが、練習方法や試合のやり方には奥深いものがあることを感じた。どんなスポーツでもいえる事だろう。

 

 

藤村記念館講演集-藤村没後五〇年記念館-  妻籠の藤村記念館主催した各界の名士の講演を文章に起こした本です。多くの講演会の記録が載っており、長い講演を良く記録したものと感心する。内容は藤村の、そして夜明け前に関するものが多いが、中には全く畑が違う学者の講演もあって面白かった。西丸四方先生の弟の西丸震哉先生の「ニューギニア食人族の食生活」などと言う講演もあり、よい本を頂いたと感じた。藤村や夜明け前を論じた講演の中で、各講師はみな「夜明け前は信州の小説、藤村は信州木曽・妻籠の人」と述べている。毎度くどくど述べるが、馬籠が所属する山口村は、今は岐阜県中津川市に合併してしまったが、その事実は返す返すも残念なことである。  カティンの森のヤニナ 小林文乃著  :   第大2次世界大戦の前後のことである。ポーランドはドイツとソ連の大国に挟まれて、常に被侵略と独立を繰り返していた。ポーランド独立の父と称される高官の娘ヤニナはが、この話の主人公である。この話はフィクションではない。著者小林が周辺の国を巡りながら取材した、カティンの森事件の詳細である。 ヤニナは航空兵を志願し将校になる。その時ソ連がポーランドに侵攻し、ポーランドの将校1万2千人を捕虜にする。スターリンはポーランド国を壊滅する目的で、捕虜全員を虐殺した。虐殺された将校の中に唯一女性がいて、空がヤニナであった。スターリンは惨(むご)いことをしたものである。戦後史の中では、ナチのヒトラーが糾弾されるが、スターリンも悪い。この話は、最近になって新聞などで報道されるようになった。ソ連がたまたま連合国側だったので、米英はあえて糾弾しなかったと思われる。ソ連も、そして共産圏だったポーランドも敢えて公開しなかったずるさも許せない。この本はぜひ読んで欲しい。いや、読むべきである。 ヘルジャパンを女が自由に楽しく生き延びる方法 アルテイシア著 : 女性向けに書かれた本のようだが、内容は「男性が女性に性暴力をしない、痴漢行為をしないことを力説してあり、男性に向けて書かれた本でる。犯罪行為をする男性のみならず、彼らを擁護したがる男性全体に向けて書かれている。私も、この本を読んで認識を改めた。書き方がちょっとおちゃらけ調で書かれているのは気になるが、許そう。男性の諸氏へ。一度はこの類の書籍に目を通してほしい。

 

 

 

 

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