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私の本の読み方 29. 実存主義者のカフェ・・、南方熊楠・・

2024年9月14日

「実存主義者のカフェにて」  サラ・ベイクウェル著  海外でベストセラーになった本の、和訳である。本文だけで466pもなる大著だ。表紙のカバーを外すと、サルトル、ボーボアール、カミュー、ハイデッガー、フッサール、ヤスパース、メルロ・ポンティーの似顔絵が出てくる。この本では実存主義者をすべて網羅してあるようだ。残念ながら日本人は全くいない。第2次世界大戦をはさんで、フランスとドイツで活躍した人たちである。巻末に登場人物の紹介があるが、全部で79人を数えた。一番登場数の多いのは、サルトル、ボーボワール、ハイデッガーだろうか?   登場人物の行動の様子や、お互いの交友を通して、実存主義を説明している。読みやすく分かりやすい手法だが、登場人物が多くて端から忘れてしまって、私には難解だった。  実存主義を説明するのに、「エポケー」と言う term  が出てくる。例えば、コーヒーを現象学的に記述するには、抽象的な仮説や感覚的な連想を脇に置いて、「目の前に立ち上る強いかおり」と言う現象(表現)だけが残るのだ。  私が印書に残った下りは、サルトルは行動力、奇抜さ、気前の良さ、冗舌さなどあらゆる面で突出している。パーティーでは出席者皆がサルトルを取り囲んで話したがる。会話は支離滅裂なところもあるが、物知りで聴衆の気をひく。そして、サルトルは徹底した無神論者であることだ。サルトルの哲学は難解だが、行動は分かりやすい。サルトルは私にとって魅力的な人物だ。  ボーボアールの最期はアルコール肝硬変だったそうだ。(手術後死んだと書いてあるから、食道静脈瘤が破裂したらしい?) ボーボアールらしい死に方だね。 それでも、サルトルよりだいぶ長生きした。  ところで、実存主義者って、常に喧嘩している人たちだね。喧嘩して翌日仲直りしたり、死ぬまで喧嘩していたり・・・

我は熊楠」(以下、WK と略) 岩井圭也著  紀伊田辺の人 南方熊楠の伝記だ。私は昔から熊楠のことが好きで、たまに伝記が出ると買って読んだ。以前読んだ中沢新一の「森のバロック」(以下、MBと略)は大著で難解だったが、読み応えがあった。(この本では熊楠こそ実存主義者そのものと読めた)     どちらも、粘菌をはじめとする植物研究、ロンドンにおける博物学の学習、神社併合反対運動(社叢の自然保護)、大日如来信仰、男色にたいする考察、を取り上げている。内容に関してはあまり変わりはないが、語られる思想内容はかなり異なった。例えば、粘菌の新種が見つかる時の様子は、MBではごく淡々と書かれるが、WKでは大日如来がその場所を教えてくれて粘菌が発見される。  MBの本の主題は「大日如来と曼荼羅の研究」であり、この大著のページのほとんどがそれで占められていた。(ここが、この本のポイントなのだが、難しすぎて私にはほとんど理解できなかった) 仏教は哲学だとその時感じた。その点、WK は食い足りない。   ロンドンの生活ぶり、神社併合に関しては、どちらもよく書かれていた。大日如来に関しては、WKでは宗教、信仰としてとらえているが、MBでは哲学としてとらえていた。男色に関しては、WKではかなりのウエイトを占めていたが、MBでは現象をごくあっさり記載していた。WKでは、熊楠の夢枕や夜間の植物採取の場面で、すでに死んでいるはずの、男色相手の美形の二兄弟の亡霊が出きて、心霊現象が嫌いな私を白けさせた。      WKでは熊楠はてんかん病?、息子の熊弥を統合失調症?の病気にあてはめて書いているが、この点、実際はどうだったのだろか?  WKでは息子・熊弥との関係が細かく記されていて、熊楠の伝記としては異色だっったが、この点は評価できる。。   どちらの本も熊楠の多才ぶりが描かれていて、先に書いた「実存主義者・・・」のサルトルの人格と重ねられて、おもしろかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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