ゆく河の流れ 1. 私の本 45. 方丈記
2025年1月12日
徒然草シリーズの「徒然なるままに」が100回になったので、今回から方丈記の「ゆく川の流れは・・・」が始まります。方丈記は鴨長明によって書かれた随筆集です。京都の街はずれに一丈四方の庵を建てて、そこに住む話です。もとは裕福な家庭に生まれた長明ですが、一族の勢力争いに破れて隠遁するのです。高校の頃古文で勉強したのですが、通しで読んでいなくて良く分かりませんでした。改めて原文を読みましたが、これを機会に高校の古文でやった本を読んでみたくなりました。
面白かったのは、長明が単身で隠棲して得たことは、誰にも頼らずに生活できる術(すべ)を得たことです。人に頼って何かを解決しようとすると、すぐにやって貰えないとか、やり方が気にくわない、等々思い悩むことばかりです。それなら、いっそのこと自分でやってしまえばよい。このことは、当ブログ、2024.12.11 私の本・・ 39. 長寿期リスク でも書きました。世の男どもよ、心して聴け 鴨長明の言うことを!
解説の中野考次は、「清貧の思想」や「ハラスのいた日々」をんでいたので、懐かしかった。この本(方丈記、講談社文庫)で感心したのは、中野孝次の読みの鋭さである。原文と対訳だけでは分からない記載が、そこここに表れている。特に前~中段では隠遁生活の気楽さが書き連らねられているが、後半では突然仏道や神道に傾注する必要性を説いている。言い換えれば、前~中段では本音が、後半ではたてまえが述べられている。中野によれば、気楽な隠遁生活を謳歌する長明に対して、世の人に「地位や、身分、経済を捨てて好きにしやがって」とそしられるのを警戒して、後半で「まじめにやっている」と言い訳をしているのである。