私の本の読み方 43. マーラーの姪
2024年12月31日
「マーラーの姪」ウィルソン夏子著 バイオリニストのアルマ・ロゼの生涯を描いたノンフィクションである。ユダヤ人のアルマは、マーラーの妹を母に、オーケストラのコンサートマスターを父に持つ。若いころから天才的なヴァイオリニストとして頭角を現すが、ナチがオーストリアを支配するようになって活躍の場が狭まれていく。経済的にも困窮し、活躍の場でも追い詰められてイギリスに移り住むが、少しでも良い仕事のあるオランダに行く。事もあろうにオランダはヒトラーに侵略され、そこで捕まれアウシュビッツに送られる。この辺りはアンネ・フランクの「アンネの日記」を読んでいるようだ。
アウシュビッツでは運よく女性オーケストラの指揮者となり、(人体)実験病棟送りを免れる。しかし37歳で刑務所内で病死する。アウシュビッツの行動については不明なことが多いが、アルマの力強い意思力で運命を切り開いていく様子は頼もしい。そして、悲劇的な偉大な芸術家の死に涙を誘う。