私の本 61. 飛騨川バス転落事故
2025年8月7日
「飛水」高樹のぶ子著 昭和43年8月18日 台風7号の北上に伴う大雨で、2台のバスが土石流に飲まれ、多数の死者が出た事故がテーマである。高樹のぶ子の小説と聞けば、恋愛小説が思い浮かぶが、ご察しの通り中年の男女の不倫を扱っている。以前 Kindle 版で読んだとき、「マディソン郡の橋」をイメージしたような内容だったと思ったが、今回紙の本が手に入ったので読み直した。「マディソン郡の橋」のメリルストリープが良かったので、彼女に行き会えるか勝手に想像したが、メリルストリープはいなかった。内容は思ったより深刻だった。
私は、この昭和43年の豪雨災害で苦い経験がある。秋になって気軽に北アルプスに出かけた。唐松岳を越えて黒部渓谷鉄道の「欅平駅」に下った。しかし、夏の豪雨災害で渓谷鉄道が営業運転をしていなかった。係員に頼み込んで、ひと駅先の「小屋平駅」から特別許可で乗せてもらった。歩いた区間は殆んどトンネルで、足元が暗い中を恐る恐る歩いた記憶がある。渓谷鉄道はあちこち土砂崩れで、寸断されてそうだ。
本を読むと、ついあら捜しをしてしまう。 冒頭、逢引きに使う旅館の名が「桔梗館」なのだが、秋の七草でキキョウを紹介する下りがある。 秋の七草に入れられているから、食用になる植物だろう、 と書かれている。春の七草はビタミンが不足する春に生えるから食用にするのだが、秋の七草を食べたという話はあまり聞かない。唯一クズの根から採取したくず粉は良質な澱粉だ。キキョウは根が肥大していて、救荒植物として使われることがあるが、それも水に晒して毒気を抜いての話だ。キキョウの根にはサポニンが含まれ、生薬として喉の痛みに使える。サポニンは界面活性作用があり、言い換えれば石鹸と同じ作用だ。
他に、ツルリンドウとヒメジョオンが同じところに生えていたり、文系の人の植物の知識はあてにならない。