私の本 65. ステラ―カイギュウ を巡るフィクッション
2025年9月14日

「極北の海獣」イーダ・トゥルペイネン著 古市真由美訳 ☆☆☆☆ 今は絶滅してしまったステラーカイギュウの話である。この本はフィンランド語で書かれたという。フィンランド語を話す人は480万弱だそうだ。フィンランドとロシアの関係を思い描くと、このフィクション(一部、ノンフィクション)は興味深い。18世紀のロシアは北極海を経て太平洋に至る航路を探索していた。ベーリング船長の船はカムチャッカ半島沿岸の小島で遭難し、ひと冬そこに滞在する。たまたま、その島に棲むステラーカイギュウが美味でああることを知った船員が、海獣を食べ尽くしてしまう。博物学者のシュテラーが標本を残そうと奔走するが、船長は帰国を急ぐ。シュテラーは骨格だけをロシアのサンクトペテルブルグに持ち帰る。 第2話は、ロシア国のアラスカ総督がカムチャッカを調査するが、先発隊が食べ尽くしてしまい、不完全な骨格標本を持ち帰っただけである。(その後、アラスカはロシアからアメリカに売却される) 第3話は、不完全な骨格標本から全容姿を類推するヘルシンキに住むフィンランド人の話。その時にバラバラの骨格を立派な骨格に再現した研究者は、絶滅した鳥類の卵を収集する自然愛好家であった。フィンランド人の自然観が描かれていて面白かった。 この本は、機会があったら是非読んで欲しい。
表紙に描かれたカイギュウの絵はものすごく大雑把である。なぜなら、ステラーカイギュウはベーリング船長の船員が全部食べ尽くしてしまったから・・・・・。 こう言う質の高い本を読むことは、読書冥利に尽きる。





















