メインアンプ・真空管式 1.
2022年11月13日
私が最後に作った真空管アンプです。40KG6A×8 2ch OTL(SEPP) 構成です。ここで、略語の説明をします。OTLは output trans-less のことで、SEPPは single end push-pull です。作ったのは1994年ごろだったと思います。このアンプを最後に、真空管アンプとは足を洗いました。それまでに、出力トランス付きのシングル・アンプでモノ、2 ch構成あわせて5台。OTLアンプは4台作りました。
私のアンプ作りは、技術雑誌(今ならMJか?)の丸ごとコピーは殆どありません。その回路の最高性能を引き出すように、測定器を駆使します。お示しした測定器は、かなり古い(50年以上)ものもあり、オーディオ・ジェネレーター以外は皆中古品です。(下の 2台はダイアルの接触不良で、時々接点復活材のお世話になります)
初めて作ったOTL( output transless amplifer)アンプです。かなり力(りき)が入っていて、電源トランスはタンゴのMS-450D、垣間見えるのは放出品の大容量んpケミカル・コンデンサー群です。出力管は、40KG6A ×4 当初、捨てレイクデイでしたが、後に訳あってモノーラル構成になりました。その後、さまざまな回路を組んだりばらしたりして現在に至っています。シングルアンプなのに電源部が大きくて、棚を作って収納しています。
最初に組んだOTLアンプの回路図です。掲載誌は「ラジオ技術(ラ技) 1973.7 著者は武末数馬氏」です。このころ、武末氏はラ技に盛んに発表していて、「真空管アンプの神様」とあがめられていました。私は、これまでにトランス付きのパワーアンプを2~3台作っただけで、全くの初心者だったのですが、思い切ってOTLにチャレンジしました。アンプの神様の回路図ですが、結果的に2点誤りがありました。まず、だれでも気付くのは図中で私が書きこんだ”S”の部分です。ツェナーと分圧抵抗が逆です。もう一つ、ちょっと難しいけれど、興味のある方は読んでみてください。OTL アンプは、スピーカーに直流を流さない様にするため、出力に大容量のコンデンサーを直列に繋ぐ井出直流をカットするか、中点非接地にする必要があります。そのため、1系統のアンプに1系統の電源が必要になります。しかしこの回路はステレオ構成(出力管回路のB±の片Ch分の接続の矢印表示がないミスプリあり)なので、本来ですと電源部も別々にして2Ch分なければなりません。もし、片ChのB電圧のバランスが崩れた場合、もう一方のChの電源電圧が逆に振れて、全体のバランスを保とうとします。その時、両方向のスピーカー(SP)に、お互いに逆方向の電流が流れるのです。アンプの神様も、このことに気付かなかったようです。そのような訳で、私は上の写真でお見せしたアンプは、シングル構成にして使っていました。
1992年9月 MJ 宮崎良三郎氏発表の回路です。このころの宮崎氏は、盛んにOTLアンプの製作記事を発表されていました。基本的に出力段は左右別電源で、位相反転回路と打消し回路に作動増幅を多用しています。出力管はカラーTVの水平出力管、あるいは定電圧(安定化)電源に使う低インピーダンスの三極管などがよく使われました。宮崎氏の回路はとてもスマートで、打消し電圧もうまく(しっかり)発生して、私の好きな回路構成です。
打消し電圧の必要性についてですが、フッターマン・アンプや加銅鉄平氏などは打消し電圧なしです。しかし、実際にOTLアンプを作ってみると、下側はプレート・フォロアーで、上側はカソード・フォロアーなので、十分出力を稼ぐにはどうしても打消し回路が必要です。その点、トランジスター式のSEPP(single end push-pull)では直結すると、上側のドライブ電圧は出力端子に接地されていて、打消しが不要でスマートです。以上の理由から私はTRアンプの製作に傾いていくのです。
この項続く