私の本の読み方 5. 星野道夫 沢木耕太郎 白川義員 ガリバー DUNCES 永田東一郎 山野井泰史 | 市川内科医院のブログ│実験室

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私の本の読み方 5. 星野道夫 沢木耕太郎 白川義員 ガリバー DUNCES 永田東一郎 山野井泰史

2023年6月21日

お借りした本4冊から紹介します。

1. 左上:「星野道夫の宇宙」Michio  Hosino   2,004年 朝日新聞社    星野道夫が撮影したアラスカの風景写真集です。息をのむような大自然と、そこに住む動物たちが記録されています。カラー写真は落ち着いた色調で、一枚一枚、ゆっくり楽しみました。この写真集は展覧会「星野道夫の宇宙」で販売されたものらしいです。展覧会は朝日新聞社が主催し、全国で7カ所開催されました。長野市の長野東急デパートでも開かれました。

2. 左上:「世界百名山」 白川義員  平成12年に開催された写真展で販売された本のようです。写真は全て航空撮影(空撮)で、山の険しさが表現されており、さらに色彩が素晴らしいです。早朝の写真が多く、巻末の解説を読んで撮影行の困難さが理解できました。ヒマラヤ山脈の空撮で乱気流に飲み込まれて、頸椎が粉々になる大事故にも会いながら,撮影を完遂した勇気に敬意を表します。どのくらいお金がかかったでしょうか? 奇跡的に帰還した飛行機(恐らくボロの)も、以後飛べなくなった機体があることでしょう。全山、初登頂の記録が記載されており、こんな険しい山をどうやって登るのだろう?と、感心させられました。白川の勇気と努力に敬服します。

3.右の2冊 「天涯」第一 鳥は舞い 光は流れ  沢木耕太郎  「天涯」第二 花は揺れ 闇は輝き  沢木耕太郎  「深夜特急」にも出てくるが、沢木は旅をするとき常にカメラを携えてきました。そこで撮影した写真を集めた本です。右下の写真は、「天涯」第二 の見開き2ページ分のエッセーと写真が写っています。エッセーはたまにしかないので、全巻あっという間に目を通してしまえます。沢木は常に旅をしていたようです。そして、人生は長い旅と感じているようでした。私は若いころから、果てしなく旅を続けることにあこがれを感じていました。今となっては叶わないことですが、「天涯」を見てなし得なかった夢を思い浮かべています。  (天涯:空の果てにも比すべき、遠隔の異郷 「新明解国語辞典」)

ここからは、自分で購入した本と借りた本です。

 

上の2冊は、ものすごくページ数の多い本です。こんな熱い本を読了できるか不安だったのですが、例の多数冊同時読書法で読み通せました。一緒に読んでいて、お互いの内容がリンクすることが多く、面白い経験をしました。 「ガリバー旅行記」ジョナサン・スウィフト著 柴田元幸著 一度は読んでみたいと思っていましたが、新訳が出たので買いました。 この本の良い所は、本文の見開きの左側のページに丁寧な解説(脚注)があることです。そして巻末の「解説」も親切で全体の流れをつかむのに役に立ちました。ガリバーが最後に流れ着いたフイヌムは馬が支配する国で、そこに人の形をした見にくい動物(ヤフー)が奴隷的な立場で置かれています。フイヌムは誰に強いられる訳ではなくても、理想的な政治形態のもとで模範的な生活を送っています。ガリバーが本国に帰ってからも、フイヌム国の仕組みを理想と考え、周囲の人に説くのでした。しかし、解説者(翻訳者)に言わせると「スイフトは、フイヌムを全体主義の最終的な段階に達していることを看破している」そして、「ヤフーのおかれた立場はナチドイツにおけるユダヤ人の位置と変わらない」そうだ。親切な脚注のおかげで全491ページもある大著を読了することができました。 「Dunces」愚か者同盟 ジョン・ケネディ・トゥール著 木原善彦訳 この本も分厚いです。全544ページあり、読でも読んでも一向に読了しない、根気比べみたいな本です。1,981年のピュリツァー賞フィクション部門受賞作にも拘らず、あまりに長くて?邦訳がなされないまま来ました。それが「デビット・ボウイ(かの有名な俳優、歌手)の人生を変えた100冊」で取り上げられ、ここにきて再び注目されるようになり、邦訳が出ました。超肥満で風変わりのイグネイシャス・J・ライリーが引き起こすごたごたが延々と続きます。ライリーは学はあるのですが、理屈をこねまわして周囲に常に迷惑を掛けます。挙句の果てに、実の母にも愛想をつかされます。私はイグネイシャスこそが「愚か者同盟」の首謀者かと思ったのですが、巻末の訳者の解説を読んでやっとわかりました。翻訳者の解説に『本書のタイトルは、エピグラフから引かれているジョナサン・スイフトの言葉からきている。 それを本書に直接重ねれば、「主人公が真の天才で、周囲の愚か者どもが同盟を結んでそれに対抗している」という物語のようだが、さすがにそうは読めない。しかし、イグネイシャスにはそう見えているのかしれない』とあります。 そんな訳で、エピグラフを写します。「世界に真の天才が現れるときは、愚か者が同盟を結んでその人に敵対する。その様子から天才を見分けることができる。」 ジョナサン・スウィフト 「さまざまな主題、道徳、気晴らしについての考察」  ここで、突然、ガリバー旅行記の著者が出てきます。 さらに「DUNCES」の意味についてです。以下は「ガリバー旅行記」の翻訳者の脚注です。 「スコトゥス(13―14世紀)は著名なアリストテレス注釈者。ここで「ど阿呆」と訳した語はDunce(s)だが、そもそもこの語は、スコトゥスの正式の名 Johannes Duns Scotus からきている。彼の混迷ぶりを後世の学者がからかったため、Duns もしくはDunce が「頭の硬い阿呆」を意味する普通名詞になったのである。」  2つの本を同時の読んでいると、思わぬところでリンクしていて、読書の楽しみが増します。

「酔いどれクライマー」永田東一郎物語 80年代 ある東大生の輝き 藤原章生著 東大スキー山岳部で活躍した永田が、仲間を引き気連れてカラコルム山脈の超難峰 K7 に挑み、成功させる。やり遂げた後、今でいう燃え尽き症候群になった永田が、設計士の人生に挑み、世間に理解されないまま挫折して、アル中で死ぬ話です。ものすごい計画力と行動があった永田が、世間との関係で調和を見出さず破滅に向かう姿は哀しい。

「凍」沢木耕太郎著 沢木ばかり読んでいる私に、姉が貸してくれました。2,002年 登山家の山野井泰史とその妻、妙子が、難壁のギャチュンカン北壁に挑み、困難な登頂を果たし、下降中に雪崩に会い九死に一生を得て帰還する話です。とにかく壮絶な戦いです。ここですごいのは、山野井夫婦が「絶対にあきらめない」その姿です。滑落しても、ザイルに結ばれていれば、命があれば、何とか解決しようとするその生命力に感心しました。普通の人は宙吊りになると、大抵は諦めてしまって、遭難死することが多いです。  ギャチュンカンと言えば、1,964年10月に長野県山岳連盟遠征隊が初登頂した山として、長野県民には親しまれている山です。7,952mと、8,000mにわずか届かない山でしたが、信濃毎日新聞の全面的な協力で初登頂されました。

 

 

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