徒然なるままに 73. 水銀の話 2.
2024年7月13日
すみません。 up load の順番が逆になってしまいました。 徒然なるままに 72. 水銀の話 1. から先に読んで下さい。
世界的にも水銀の毒性は常に指摘されながら、殺菌剤、消毒剤として、医薬品として使われてきました。梅毒の治療薬として、無機の水銀が使われたこともあります。梅毒が治ったけど投与された人は重症になりました。有機水銀は一時穀物の殺虫剤として使われ、多数の死者が出たこともあります。金や銀の精錬、渡金作業に従事した人は、命と引き換えに賃金を得たのかも知れません。つい先ごろまで、水銀の使用は野放しにされてきました。どこの学校の理科準備室でも、薬品棚には水銀の入った小瓶がありました。戯れに持ち上げると、あまりに重くて思わず落としそうになリました。水銀の比重は、13.6 で、鉛 Pb と同じくらいです。水銀は常温で液体で、なおかつ比重が重いので、昔の気圧計は水銀を利用しました。気圧計は水柱なら 10.3 m にもなりますが、水銀では 76cm で済みます。理科室にある水銀気圧計は格好が良くて、私のあこがれでした。 (今気圧計はすべてアネロイド型になり、表示もディジタルでです。腕時計型の高度計は私も山に行くときはよく使います)
水銀の入った温度計はガラス溜めを割ると厄介です。水銀がコロコロ転がって、回収が難しいです。箒と塵取りで半分ぐらいは回収できますが、完全に回収するのは困難です。実は、この取り残しが悪いのです。水銀は気化して有毒な水銀蒸気に変わり、呼吸器を通じて体内に入るからです。 世界中にこれまでに廃棄されてきた水銀は、水系から海に流れ込み、プランクトンを通じて大動物の体内に蓄積されます。日本近海のマグロにもかなりの濃度の水銀が蓄積さていると言います。鯨肉にも入っていると聞いたことがあります。 (水銀は亜鉛族の金属で、亜鉛は無毒で動物では必須な金属です。亜鉛不足は味覚障害を起こします。動物は亜鉛と間違えて、水銀を取り込んでしまうのかもしれません。水俣病の成因はこのメカニズムが働いたのです) 中国では、アセトアルデヒド生産のメチル水銀は回収されているのでしょうか? 東シナ海、南シナ海に廃棄されたメチル水銀が、近海を回遊するマグロに取り込まれていなければよいけれど。
昔の鏡、蛍光灯、一部の真空管(水銀整流器) にも水銀が使われていました。いまでも、他の廃棄物と分けて回収されています。体温計、温度計、血圧計、気圧計などの水銀は、まとめて北海道の廃坑の地中深くに埋められています。
かつては、傷口の消毒、化膿止めにマーキュロクロームがつかわれました。成分名はメルプロミン、一般的に赤チンと呼ばれました。昭和50年頃に使用禁止となりました。父は皮膚科医だったので、トビヒ(白色ブドウ球菌性膿痂疹)の治療に、マーキュロクロームをチンク油に溶かして使っていました。鮮やかなピンクの薬でよく効きましたが、マーキュロが使用禁止になった時期と、父が廃業した時期が丁度重なったのは幸いでした。それにしても、昔はトビヒの子供が多かったなあ。
水銀で書くことはこれくらいだと思うのだけど、有ったらこの後に付け加えるかもしれません。