私の本の読み方 25.浦上玉堂
2024年8月13日
2024.5.15 実験室ブログ 私の本の読み方 19. 「日本思想史と現在」渡辺浩著 の書評の中で褒めて書いてあったので読んだ。「浦上玉堂」-白雲も我が閑適を羨まんかー 高橋博巳著 難しくてよく分からなかったが、難解なところは飛ばして読んだ。殆どが玉堂の漢詩とその解説で占められ、間に玉堂が全国各地で行き会った同好の志との交流譚で纏められている。玉堂は備中鴨方藩士だったが、50歳で武士の身分を捨てて脱藩する。二人の息子のうち一人を連れて、全国各地を転々とする。絵を描き、七弦琴を鳴らし、漢詩を読む。酒が好きで、酔うほどに感情が高まっていく様子を丁寧な漢詩の解説で読ませてくれる。脱藩してすぐに会津若松で冬を過ごす。寒い会津の冬を、粗末な夜具で送る玉堂の苦労がしのばれる。本の表紙の絵でもわかるが、当時玉堂の絵はあまり評価されず、息子の春琴の絵の方が売れた。(その収入で玉堂父子は生活していた) しかし、玉堂の琴の腕前と漢詩は天下一品で、各地の文人に持てはやされた。 絵画は明治に入って一回(この時はフェノロサに見出されている)、さらに、平成に入って急速に知られる様になったという。
私の母方の祖先に、山田松斎と言う文人がいた。松斎は農学書を出版し、七弦琴を弾いた。七弦琴は当時の文人の嗜みだったらしい。浦上玉堂の本には、京都の頼山陽や江戸の亀田鵬斎のことも出てくるが、松斎は山陽や鵬斎と交流があった。玉堂が会津来訪の際、もしかしたら松斎と会った可能性はあっただろうか? ちなみに、この本には松斎の名前は全く出てこなかった。残念!
この本の出版社のミネルヴァ書房は私は初めて知った。日本の文化を支えた多くの著名人の評伝を出している出版社らしい。(評伝は未だ予定の半分も上梓されていないらしい) 読み応えのある好著だった。