私の本の読み方 4. CRISPR ネアンエルタール人 NATURE FIX  高樹のぶ子 南極越冬 壇一雄 天路の旅人  | 市川内科医院のブログ│実験室

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私の本の読み方 4. CRISPR ネアンエルタール人 NATURE FIX  高樹のぶ子 南極越冬 壇一雄 天路の旅人 

2023年4月28日

暫く振りに、読後感想文を書きます。初めに科学物3冊です。

「CRISPR」ジェニファー・ダウドナ著  「ネアンデルタール人は・・」スヴァンテ・ベーボ著   近年ノーベルの生理学賞を受賞した2人です。どちらも硬くて読みにくいけど、「医者たるもの、現代の遺伝子研究の基礎的事項は知っておこう」の気概で挑戦しました。「CRISPR」は日本の学者が発見した細菌がウイルスから身を守る基礎研究が始まりでした。前半は難解でしたが、その応用やゲノム編集にかかわる問題点などの章は読み易かったです。現在、体細胞の遺伝子組み換えまでは許されていますが、生殖細胞にまで範囲を広げることが倫理的に許されるか検討されているそうです。日本ではこの点のコンセンサスがなく、早急な協議が必要と感じました。「ネアンデルタール・・」は微量のサンプルの中から、いかに異物(現代人のDNA)に混入を減らすか、さらにライバルたちとの競争に勝ち抜くかがスリリングでした。以前ノーベル賞を受賞した「クラゲの遺伝子に蛍光色素をくっ付けた物質」を使って、異物の混入を感知する技術が応用されているそうです。この技術は、日本のノーベル賞受賞の科学者の発見です。「ネアンデルタール・・・」は将来ゲノム解析が一般的になった時、人種間の相違がナショナリズムを喚起しないか心配になります。

NATURE FIX フローレンス・ウイリアムス著  「自然界に身を置くことで、心身ともに健康になる」ことを説いています。この概念は日本の学者(千葉大学の宮崎良文教授)が言い出しました。今は、「森林浴」と言う言葉は世界共通語になっています。その概念が韓国の自然協和政策に影響し、シンガポールやアメリカ本土に定着してきました。一方、有史以来自然に親しむ生活を送ってきた多くの国も存在しました。著者が、それらの国を手広く回って、得られて知見を記したルポルタージュです。「森林浴」と聞くと、なんとなく胡散臭い思考かと考えられますが、あながちカルトだけではないように思います。

私が興味を持ったことは、フラクタル・パターンと脳の活性化です。例えば、海岸線の長さを測ろうとすれば、より小さな物差しで測れば図るほど、大きな物差しでは無視されていた微細な凹凸が測定されるようになり、その測定値は長くなっていきます。自然界はこのパターンで構成されているので、そのパターンを思い浮かべることで脳が活性化されるのだそうです。自然界のフラクタル次元は0から3次元の無理数で、例えば、実際の海岸線フレクタル次元は1.1から1.4の間だそうです。自然界の事物は、物差しを小さくすることで、その大きさは無限に長くなります。ジャクソン・ボロックと言う画家がいましたが、彼の抽象画はそのフラクタルが・パターンが描かれており、自然を模したイメージだそうです。フラクタル図形(マンデブロの集合)で海岸線を表すと、拡大率を上げて行くと、常に同じパターンが繰り返されます。フラクタルは、それらが「入れ子」の構造になっているのだそうです。入れ子と言えば、ロシアの入れ子人形「マトリューシカ」を思い浮かべます。人間(動物)には、概念的にフラクタルがはめ込まれているようです。

いま、自然への回帰のムーブメントが叫ばれる中、日本だけが逆行しています。国中の里山がゴルフ場に化け、神宮外苑の森が高層ビルに変わろうとしています。心配になりました。

朝日新聞の切り抜きです。岐阜県を代表する小説のトップに、島崎藤村の「夜明け前」が紹介されていました。これには驚きました。「夜明け前」と言えば「馬籠」、「馬籠」と言えば「木曽」、「木曽」と言えば「信州」でしょう。「夜明け前」は「木曽路はすべて山の中・・・」で始まります。木曽郡山口村が岐阜県中津川市に編入されたのは、2,005(平成17⦆年で、それは住民投票で決まりました。編入してしまった後で、私は馬籠の藤村記念館の民芸員の方と話したことがあります。その方は次のようにおっしゃいました。「馬籠の住民は今でも長野県民だと思っています。中津川市に編入が決まった時、長野県民(特に県知事)は、冷たかったかった。もっと、長野県が『山口村を手放さない』と言う意思をしっかり示して欲しかった」と・・・。  その時の県知事は、田中康夫氏でした。彼は東京都出身で、長野県民の気持ちを理解できなかったのでしょう。こんな大事な決定事項をだれにも相談しないで、知事の一存で決めてしまった。その時、長野県議会は何をしていたんだろう。馬籠を手放してしまった長野県民もどうかしています。当時、私も「何か変だなあ」と感じていました。

 

この切り抜きの続きに・・・・

高樹のぶ子の「飛水」が「旅する文学」岐阜編で紹介されていました。「平凡な中年男女の恋愛を、ゾクッとするタッチで描いている。・・・私見では、『マディソン郡の橋』をしのぐ世界一美しい不倫小説。ラストシーンで泣くよ、たぶん。」と書いてあった。以前見た映画「マディソン郡の橋」がよかったので、物見高く読みました。手に入ったのが電子書籍(Kindle版)で、表紙の写真がうまく撮れなくて見にくいです。読んでみて私の感受性が鈍いせいか、それほど泣けなかったけど、終わり方は感動的でした。私が元気だった頃、ドライブして回った岐阜、富山の地名が随所に出てきて楽しかった。

 

 

「人類初の南極越冬船」ジリアン・サンクトン著  ベルギーの探検家、ジェル・ラッシュが、冬に向かうなか蒸気帆船で南極海に挑み、氷に閉じ込められて(半分、意図的に)脱出できず越冬する話です。その越冬は悲惨なもので、死者が出たり、狂乱するもの、病気になるものが続出する。その中で、船長のルコワント、ノルウェーの探検家アムンセン、アメリカ人の探検家クックなどの活躍が克明に描かれている。無事帰還し、その後のアムンセンやクックの動向も面白かった。私はこの本に関し、表紙写真を見て読みたくなりました。何か幽霊船みたいで、ものすごくインパクトのある写真です。

「壇」沢木耕太郎著 小説「火宅の人」を書いた檀一雄の妻・ヨソ子の気持ちになって書いたノン・フィクションです。沢木耕太郎の得意分野の本で、最近「沢木」マイブームの私に姉が貸してくれました。引き込まれました。沢木は暇があったらみな読みたい。そして、「火宅の人」も読みたいと思いました。

「天路の旅人」沢木耕太郎著 戦中に密偵として中国奥地・内モンゴルからチベット、インドを旅した西川一三の伝記です。沢木が根気よく取材して西川が死んでから書き上げたスケールの大きなノンフィクションです。西川はラマ教の僧侶に成りすまして旅を続けます。すごいのはその健脚ぶりですが、必要とあれば寺院で長期間修行したり、行きたい地方の言語を習得するなどの勉強ぶりもすごいです。たまたま旅に出る前に滞在していた内モンゴルの言葉を、チベットやインドへ行ったとき、そこにいる内モンゴル出身の人と話しても、だれも西川が日本人であることに気付かないのです。西川は旅をし続けるために、あらゆる努力をします。最後は、異国を身を隠して旅をし続けてきた同僚の密告?で、インドで捕まって強制送還されます。西川の旅は、未知への興味です。次から次へと興味が走って、止まらないのです。日本に帰ってきて、マスコミにもう一度同じコースを巡る旅をやらないかと持ち掛けられた時「一度行ったところを、二度回るのはつまらない」と言って断ったそうです。分かる。!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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