私の本 50. 名画を見る眼、西洋美術史入門
2025年2月17日
「名画を見る眼 Ⅰ Ⅱ 」 高階秀爾著 岩波新書 Ⅰの副題は「油彩画誕生からピカソまで」とあり、ファン・アイク~マネの15人の絵画の巨匠の絵画の解説が記載されている。Ⅱ は副題「印象派からピカソまで」で、モネ~モンドリアンの14人である。こんな本が、1969年、1971年に出版されていたのだ。洋画ファン必読の名著である。2023年にカラー版が出版理解度が広がった。是非読んで下さいマネ
You tube の人気番組に、山田五郎の西洋美術史の解説がある。これも面白いが、本著の方が専門性が高くよみごたえがある。系統的に作者を取り上げているので、美術史全体を見渡すのに都合がよい。
本著で高階は自分にとっての名画を一点選ぶとしたら、「エドゥアール・マネのフォーリー・ベルジェールのバー」と答えている。そして、「十字軍を境にヨーロッパの文明は切れ目を経験し、この絵がそれにあたる」と書いてある。「いずれ、この絵の解説を書く」と言っているので期待したい。
ボッティチェルリの「春です」今回は向かって右の絵の解説です。4人いる女神の左端の下半身赤い衣装はヴィーナスです。その右の花柄の衣装をまとっているのがフローラ、その右の薄い衣装はニンフのクロリスです。背後からクロリスを誘惑しているのが、好色の西風のゼフュロスなのです。実は、フローラは誘惑された後のクロリスなのです。次の解説を読んでください。「大地のニンフ、クロリスは、好色な西風ゼフュロスによって追いかけられる。この、ゼフュロスは頬を膨らませ風の神の姿で登場してくる。ニンフはなんとか風の神の追跡から逃れようとするが、ついに捕まえられてしまう。冬のあいだ単色の衣装に身を包んでいたニンフが、春風に吹かれてあでやかな女神に変身する様子を表している。
「ゼフュロス」Zephrus は、西風、風 と訳される。蝶をやる方ならご存知でしょう。ゼフィルスと言えばミドリシジミの総称である。ミドリシジミは光の角度で美しい緑色に変色する。南米のモルフォ蝶は美しいブルーに染まる。蝶マニアにゼフィルス・ファンが多い。その姿の美しさゆえ、総称を「ゼフ」と名付け、春風の名を与えたのだろう。ところで、syphilis(シフィリス)とは梅毒のことなのだが、語感が似ていると思いませんか?どちらも「好色」な感じがしてきます。