私の本の読み方 2. 寄生虫学 線虫 女性狙撃兵 与謝野晶子 ヤギを飼う 深海潜水 西南戦争 和田秀樹 村山由佳
2022年11月1日
ブログ「実験室」の「私の本の読み方 1.」でも書きましたが、私が本を購入する目安は、新聞や週刊誌の「書評」です。読んで面白そうな本を選びますが、どうしても自分が興味のある本を選びがちになるので反省しています。写真上から、信濃毎日新聞、朝日新聞、週刊朝日の書評欄です。書評は毎週載るので全部網羅するのは大変ですが、できるだけ読む様にしています。読みかけの本、1ページも開いてない本が、たくさん貯まってしまいました。これからは書評を読むだけで、半分読んだ気になって、本を買うのは暫く止めようと思います。以下に、読了した本を順次紹介します。
右の本から行きます。「くだらないものが わたしたちを 救ってくれる~ああ、今日も 推し(線虫)が尊い~」 キム・ジュン著 著者は韓国の生物学者で、線虫を使ってゲノム解析の研究をしています。内容はその苦労話ですが、線虫のことも少し書いてあります。一方。私は高校時代は生物班に所属していました。いま、そのOB達が会報を1年に1回出しています。この本を読んで、線虫のことを書いてみました。(ブログ 実験室 2022.11.11「線虫」参照)そのような訳で、同じ写真が使われていますがお許し下さい。「くだrない・・・」を読んでみて、日本に比べて韓国の学者は恵まれていると思いました。本の中で著者は、欧米に比べて韓国では研究に対して予算配分が少ない、研究する環境が厳しい・・」と言っていますが、読んでみて私が感じたのは「日本の方がもっと深刻た」と言うことです。そして、「韓国の学生は、日本の学生に比べてよく勉強(研究)する」とも感じました。このままでは、日本は世界からおいていかれる・・・・・
「人体寄生虫学提要」 私が学生時代に買った(親に買ってもらった)寄生虫学の教科書です。著者に横川という名前が読めます。日本には横川吸虫と言う、人に寄生する寄生虫がいますが、その研究をされた方かその親族の方だと思います。この教科書は、今読むととても丁寧に書いてあって、しかも読みやすいです。寄生虫学は大学では「医動物学」と言って、大島教授の授業を受けました。大島教授の授業はとても分かりやすく、しかも面白くて学生に人気がありました。授業が面白いと出席率もよくなります。私は成績は良くはなかったけれど、授業だけはよく出ました。大島教授は定年前に東京の大学の教授になって、私たちが通っていた大学を退官されました。あと、大学時代で授業が面白かったのは、薬理学の中西助教授でした。この先生も北陸地方の公立大学の教授になって私が通っていた大学を退官されました。良い先生は地方大学では、長く居つかないようです。
少し前に読んだ本ですが、面白かった本もあるので紹介します。
「同志少女よ 敵を撃て」 逢坂冬馬著 第2次世界大戦中のソ連の女性狙撃兵を描いた小説です。今のウクライナを巡る状況も出てきて興味深く読みました。主人公はものすごく意思の強い女性だと感じるとともに、戦争のむなしさを強く感じました。
「やわ肌くらべ」 奥山景布子著 与謝野鉄幹をめぐる女性たちとの恋の遍歴を、主に与謝野晶子の目を通して描いたノン・フィクションです。「明治時代の文豪の価値観や倫理観は今とはずいぶん違うなあ」が、私の感想です。忙しい人は時間の無駄だから、あまり読まなくてもいいです。
「カヨと私」 内澤旬子著 これは絶対にお勧めです。瀬戸内海の小島で山羊を飼う話です。山羊、しかも雌、侮(あなど)るなかれ ! 家畜がこんなに自分の意思を主張するとは思いませんでした。著者は完全に山羊に振り回され、その意志を叶えてあげる優しさに感激しました。
「イントゥ・ザ・プラネット」 ジル・ハイナース著 和訳すれば「惑星の内部へ」何とも壮大な題名ですが、それなりの迫力があります。ただ、すごく怖いから読み切るにはパワーが必要です。内容は深海(あるいは氷山)の洞窟を探検する話ですが、その前に基礎知識をお話します。水中では、10m潜るたびに気圧が1気圧上昇します。10m潜れば2気圧になり、海水面の2倍です。潜水服を着て30mの海底で作業すれば、常時4気圧の圧力を受けています。一方、地上の大気は1気圧で、その20%(0.2気圧)が酸素、80%(0.8気圧)が窒素です。30mの海底(4気圧)のもとでは、酸素が0.8気圧、窒素は3.2気圧です。血液中のヘモグロビンは酸素をすぐに吸収するので、圧力をかけても血液中の酸素分圧はあまり変化しません。ひきかえ窒素は加圧するとたくさん取り込まれ、減圧すると血液に溶け込んでいた分が気泡になります。作業を終えて海面に戻るとき、溶存していた窒素が気泡になって、それが全身とくに脳の血管を詰まらせます。それが潜函病です。潜函病を防ぐにはゆっくり時間をかけて浮上する必要があります。この本ではボンベを酸素、窒素、ヘリウムの混合気体で満たし、リブリーザーと呼ばれる高機能のデバイスで、酸素分圧やその他の不活性ガス(この場合は窒素とヘリウムガス)の分圧を調節します。しかし、急激な浮上は潜函病を発生さるので、浮上はゆっくりになります。このことは今年、知床で観光船が沈没したとき、作業する人は浮上に1日以上かけています。一方、著者らは深さ200mくらいの深海、あるいは氷山の洞穴ですから、低温に対する体力の低下にも備えなければなりません。 ここまで読んで下さった方なら、きっとこの本を読み切れると思います。お楽しみに !!
「へぼ侍」坂上泉著 週刊誌か?新聞か?の連載で読んだのを忘れて、買ってしまいました。初めに読んだ時にも面白かったので、また読みました。大阪の商人が志願して兵役に就き、西南戦争戦地の南九州に赴く話です。成り行きで小隊の体調になってしまった「へぼ侍]が戦を重ねる中で徐々に成長していく話、商人だった才覚を生かして小金を稼ぐ姿がほほえましい。そして、「政(まつり)事を動かすのは、「力」ではなく「論理的な説得」であることを学んでいく「へぼ侍」でした。
「六十代と七十代 心と体の整え方」 和田秀樹著 高齢者は若かったころの自分が忘れられず、つい無理をしすぎて体調を壊すものです。そんな訳で、私も体調を壊しましたが、この本を読んで大いに勇気づけられました。ただ、書いてあることが読者に理解され、それを実行するのは難しいと思いました。さらに、新聞に書いてありましたが、著者の和田先生は、自身かなりの高血圧症と糖尿病があるそうです。内科医の私に言わせれば、あまりコントロールされているとは思いません。言うことと実行することは一致しないものですね。
「星屑」 村山由佳著 これは面白かったです。性格も歌唱方も全く異なる二人の少女が、デュエットを組んで世の中に出て、アイドルになるまでの話です。芸能プロダクションの女性プロデューサーの目を通して書いてあり、フィクションとは思えないほど迫力がありました。作中にてでくる芸能人もそれぞれ個人名が推測され、あれこれ想像をふくらませることができて楽しかったです。
週刊朝日に連載しているコラムです。「著者はノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。」と紹介されています。このコラムはサンデー毎日から週刊朝日に引っ越してきた珍しい経歴を持ち、良質な読書案内であり、旅案内でもあります。今の私には読書はできても、海外旅行、特にアジア広域は無理です。
この項、これで終了です。 私の本の読み方 3. をお楽しみに。