私の本の読み方 3. いやな気分 アフリカ無文字社会 オーガニック農法 洞窟おじさん 論文の書き方 特殊な患者 遠野物語 縄文人・弥生人 星野道夫 五木寛之 外岡秀俊 深夜特急 | 市川内科医院のブログ│実験室

長野県中野市三好町1-2-10 TEL:0269-22-3366 長野電鉄長野線「信州中野」駅 徒歩6分

タイトル背景

実験室市川内科医院のブログ

▼ MENU

私の本の読み方 3. いやな気分 アフリカ無文字社会 オーガニック農法 洞窟おじさん 論文の書き方 特殊な患者 遠野物語 縄文人・弥生人 星野道夫 五木寛之 外岡秀俊 深夜特急

2022年12月5日

いやな気分よ さようなら コンパクト版」 デビッド・D・バーンズ著 :   うつ病に対する認知行動療法について書かれている本です。私が気分障害で苦しかった時に買って読みました。読んでみて、認知行動療法はそれを実行するのにはかなりのエネルギーを必要とすると感じました。結局、最後まで読み切れずに途中で挫折しました。結果的に、私は友人のアドバイスに従い、自分の病気の状態を把握し、それに対する適切な服薬治療で乗り切りました。私の病気は、つまらない駄文を読んで下さる皆様に支えられて良くなったと、改めて感謝する次第です。

無文字社会の歴史」 川田順三造著 : アフリカの文字を持たない部族の調査報告書みたいな本でした。文化人類学に興味があり、部族の歴史を伝えるのにどんな方法で伝えるかを知りたくて、古書店へ注文しました。ある種のそれを専門とする人により、太鼓や歌で伝えるらしいです。川田順造という有名な人類学者に書いてある本だから・・・という興味もあったのですが、読んでもちっとも面白くなくて、1/4も読まないで挫折しました。買って損した。安かったけど・・・・

オーガニック」 ロビン・オサリバン著  : アメリカで最初に有機農法を見出したJ・I・ロディルとそれに続くさまざまな人、あるいは有機農法に批判的な人たちの業績をまとめた本です。賛否両論に渦巻く様子を克明に綴った本ですが、あまりに長くて、3/4で挫折しました。長さに,完敗です。

洞窟オジさん」 加村一馬著   :   13歳の少年が親の折檻に耐え切れず、愛犬と一緒に家出をして、20歳?ぐらいまで足尾銅山の廃坑跡で生活する話です。ノンフィクションで、NHK BSのドラマにもなって、注目されたそうです。40歳過ぎまで放浪生活をして、そのあと社会復帰していく様子が、この本の主題のようです。私はむしろこの少年の逞しいサバイバルぶりが印象に残りました。この本を読んで、ふと子供のころTVで見たディズニーのアニメ「ジャングルブック 少年モーグリー」を思い出しました。状況は全く違うけど・・・  ここに挙げた6冊で、読了したのはこの本だけです。

論文の書き方」 小熊英二著 :  私も大学医局時代に論文を数編書いたけど、当時書き方など全く知らず、指導教官に言われるまま目くらめっぽうに書いたものです。今改めてこの本を読んでみると、わたしのやりかたは、「当たらずとも遠からず」でした。論文だけでなく、他人(ひと)に納得してもらう文章は、決まった定型があることに納得しました。半分ぐらい読んで、読んだことにしました。

ある特別な患者」 エレン・デ・フィッサー著 : 様々な科の医師が自分で経験し、印象に残った患者との交流を記述した本です。快癒した患者、死んだ患者、問題を抱えながらも元気に病院の門を出て行った患者、様々な患者像が描かれていました。ただ、医療者としてこの本の感想を言わせてもらえば、「それでどうした?」と言う感じでした。この本も、3/4くらいで挫折です。

今回の紹介した本は、中途放棄の本が多くてすみません。

私は週刊誌は「週刊朝日」をとっています。人は「新聞社が出す週刊誌なんてつまらない」と言いますが、私は「地味だけど読みでがある」と思います。このあいだ、日本ABC協会から週刊誌発行部数が発表されました。それによると、「週刊文春」が22万8939部で、「週刊現代」「週刊新潮」「週刊ポスト」・・・と続き、6位で「週刊朝日」がずっと部数を下げて 4万5824部でした。「サンデー毎日」に至っては部数さえ発表されていない惨状です。頑張れ「新聞社発行週刊誌」です。 上位4位の週刊誌は、新聞の広告欄の「大見出し」を読めば、大体書いてあることが類推できるので、わざわざ買わなくてもいいです。

 

 

遠野物語と柳田國男」  新谷尚紀著  : 以前、柳田國男の「遠野物語」を読んだとき、あまり面白くなくて、どうしてこのような小説?が注目されるんだろうとか思いました。今回、解説付きの文を読んで、初めてその面白さが分かりました。私は旅行や山登りが好きで、日本のあちこちを訪ね歩くのですが、そこで様々な民話や故事の説明板を読みます。どうして、こんな不思議な話が伝えられたのだろうかと疑問に思うことが多々ありました。日本のあちこちに伝えられている不思議な話には、すべて共通するルーツがあることが、この本を読んで理解できました。一読をお勧めします。

縄文人と弥生人」 坂野徹著 : 日本人の来歴は、「日本列島全体に縄文人が住んでいたところに、大陸から渡来した鉄器と稲作文化を持った人たち(弥生人)が、ゆっくりと縄文人と同化しながら勢力を広げた」説明されています。しかし、明治以降、日本人の来歴は歴史民俗学者や考古学者により、様々に言い伝えられてきました。特に、戦前、戦中は時の政府に同調するような手前勝手な論説もあったようです。

今年のノーベル賞を受賞したS・ペーボは、ネアンデルタール人の骨をゲノム解析し、現代人との接点を発見しました。これからは、ゲノム解析による人類学が進歩していくと思われます。ただ、日本列島は酸性の土壌で、人骨は短時間で溶けてしまい、土に帰ります。引き換え、ヨーロッパ大陸は石灰岩地帯でアルカリ性土壌のため、人骨は長期間保存されます。日本では石器や土器を調べて、我々の祖先のことを調査するしかありません。

日本で、旧石器時代の石器が発掘された最初は、群馬県の岩宿遺跡です。長野県内でも北相木村の栃原岩窪遺跡が知られています。昭和40年代、信州大学第2解剖学教室の教授は鈴木誠先生で、教室のメインテーマは栃原岩窪遺跡の発掘でした。当時、助教授だった香原志勢先生は、その後立教大学の教授になられ、この本の引用文献の著者に取り上げられています。

 

 

2023.1.19 記  私のブログの画像は自分で撮った写真を載せてきましたが、今日だけ朝日新聞の切り抜きになってしまったことをお許しください。いずれ、この日は来ると思っていたのですが、「ショック」でした。私は39年前の開業以来ずっと「週刊朝日」読んできました。昔は、連載小説をはじめ隅から隅まで読んでいました。読み終えたら待合室に置いて患者さんに見てもらって、3か月ほどしたら資源ごみに出していました。週刊朝日のバックナンバーを読みたいだけで、私のところに通って下さる患者さんもおられました。最近でこそ、何かと気ぜわしくて、必ず読むのは下山進の「2050年のメディア」他数編だけですが、手元に置いておくだけで何か安心できるようで、ずっと購読を続けてきました。休刊と言って、再刊した話は聞いたことがありません「朝日ジャーナル」の時もそうでした。この先、新聞も廃刊にならないことを望みます。私が生きている間だけは、新聞の刊行は続けてほしいと思います。

 

 

 

6月には休(廃)になる週刊朝日 ’23.2.3号 「暖簾にひじ鉄」内館牧子のコピーです。  私は、実行できないけど良いことが書いてありました。「本を買うなら「ネット」で買わずに、書店へ行ってさがせ」と言うことです。この先を読みたい方は、mail 下さい。ただ、中野市内にはたくさん本が置いてある本屋はなく、長野市でも平安堂がどこかに引っ越してしまいました。物理的に無理です。

そんなことを言いながら、本誌の書評を見ていたらどうしても欲しくなった本があり、Web.で注文してしまいました。 (注) 以前にも書きましたが、ネットは「道路みたいなもの」、ウエブは「荷物を運ぶトラックみたいなもの」とWeb.にでていました。内館さんですら間違っていると思います。

旅をする木」 星野道夫著:写真家の星野が、アラスカで生活しながらそこの自然や風土、旅行した世界各地の様子などを著したエッセー集である。この本の題名の「旅をする木」は、ビル・ブルーイット著の「北国の動物たち」(生物学の本というより、アラスカの自然を物語のように書き上げた名作)の第1章に取り上げられている。あらすじは、「鳥の落としたトウヒの種が川沿いの森で芽生え、大木になったが川岸が浸食されて流され、ユーコン川にたどり着く。ベーリング海を経て、北極のツンドラ地帯の浜辺に流れ着き、そこのランドマークとなる。そこへ狐がマーキングしたりと様々なことがあって、最後は原野の家の薪ストーブの燃料になる。燃え尽きた大気の中に新たなトウヒの旅が始まる」といった話である。アラスカの大自然にほれ込んだ星野らしいエッセー集である。この本で池澤夏樹が解説で述べているが、後に星野はカムチャツカでヒグマに襲われて死んでしまう。ちょとした油断で命を落としてしまう星野である。  冒険家や登山家で行動中に死んだ人は多い。加藤文太郎、植村直巳、栗城史多、星野龍児、名塚秀二、大山洋次、他・・・。 本多勝一が言っている。「どんな大ベテランも登山の第一線にいる限り、いつかは小さな確立にひっかかる」と。

風の王国」 五木寛之著:山窩の末裔たちが登場する架空の小説である。話自体はありきたりだが、作者が調べた山窩の来歴が詳しく書かれていて興味深かった。山窩は実際に存在したのか、私は疑問だった。しかし、戸籍を持たない漂泊の民はつい先ごろまで現存したらしい。山窩を語った小説家に、椋鳩十、三角貫、他がいる。椋は山窩の生活ぶりを温かな眼差しで述べているが、三角は悪人集団のような表現をしている。五木は三角を批判的に書いているが、私もそう思う。

北帰行」 外岡秀俊著:作家でありジャーナリストであった作者が、若いころ著した小説である。主人公の少年が経験した不条理な出来事と、石川啄木が故郷で経験した誤解に基づく出来事を絡めてある。読後感は著者があまりに頭が良すぎて、語彙が非常に豊富で難解であった。こういう小説を名作というらしい。主人公と仔馬の暖かい関係が心を打つ。

深夜特急」1.3.6 沢木耕太郎:日本を出発し、どんな方法でも良いからインドのカルカッタに着き、そこから陸路、しかも路線バスを乗り継いでロンドンまでたどり着く賭けをして、最終的に成功する著者の経験に基づく小説である。初発の単行本では全3巻で、第一便、第二便は1,986年5月に、第三便は遅れて1,992年10月に発行されている。その後、1,994年に全6巻に分けて文庫本化された。私が読んだのは、購入できた新版の1、3、6巻である。第1巻は香港、マカオで、導入からぐんぐん引き込まれる筆致に圧倒された。面白かったのはマカオのカジノで、ギャンブルに嵌ってすってんてんになる直前に、賽子(さいころ)がふられた時に発生する音から、勝ち目を見つけて勝ち続け、何とか元を取ることに成功したくだりである。第3巻はインド、ネパールで、インドのアシュラムという親に育児放棄された児童を教育する施設の様子が印象的だ。そこで経験した子供との触れ合いに心が温まった。第6巻は南ヨーロッパと最終目的地のロンドンである。ロンドンで、旅をやり遂げて賭けに勝ったことを日本に電話するために、ロンドン中央郵便局に出向いた件(くだり)は笑った。「電話をするのは郵便局ではない。電話ならその辺の公衆電話からどうぞ・・・・。」   沢木耕太郎の文章は簡潔で分かりやすい上に趣がある。いま「天路の旅人」を読んでいるし、朝日新聞  Be の「暦のしずく」も面白い。

 

 

pagetop