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私の本の読み方 9.穂高連峰のでき方 池内修 グレート・ギャッツビー ルナール 石垣りん ロバと旅

2023年10月19日

 

「地学ノート」竹下光士・原山智 著 : 北アルプスの槍穂高連峰を中心とした山岳の成り立ちを解説した本である。私はこれまで、北アルプスはフォッサマグナの西端部が隆起してできたとばかり思っていたが、この本によれば槍穂高連峰は巨大なカルデラ火山のなれの果てだと言う。このカルデラは、北は槍ヶ岳北鎌尾根から南は安房峠に至る、南北22kmに及ぶ巨大なものである。今の主稜線は凝灰岩の硬い所が残ったという。100万年単位の時の流れを経て、今の山々ができたことを知り、地学の面白みを感じた。さらに数万年前の氷河期時代の跡が、北アルプスのあちこちに残っているという。

私は若いころに槍穂高連峰に良く登ったが、その時この本に書いてあるようなことを知っていれば、もっと面白い登山が出来たと思う。今となっては、遅いけれど・・・  それにしても、長い年月をかけて行われる地表の巨大な造山活動に思いをはせると、今細かいことにちまちま悩んでいる自分が馬鹿らしくなる。

「すごいトシヨリBOOK」池内紀著 : 「この手の本は大体つまらない」と言うのが、私にとって相場だが、全10章中3章は面白かった。「第7章 老いの楽しみ 第8章 日常を再生する  第9章 老いの旅」である。表題から、どんなことが書いてあるか、だいたいお分かり頂けると思う。これを読んで、「部屋を片付けて、調律師にピアノを調律してもらったら、ヤマハ音楽教室に通ってピアノを習いたい」と思った。(ただ、思っただけです)

「グレート・ギャツビー」スコット・フィッツジェラルド著 村上春樹訳 以前、村上春樹訳の「ライ麦畑で捕まえて(The Catcher in the Rye)」J・D サリンジャー著 を読んだとき、面白みがよく分からなかった。解説の中で村上は「グレート・ギャツビー」は、もっと良い(面白い)と書いてあった。「グレート・・・」を買って読んだが、やはり良く理解できなかった。それ以前に村上訳の「心臓を貫かれて」マイケル・ギルモア著を読んで、内容は恐ろしかったが村上の訳に痺れたのだったが・・・。そのような訳で、「グレート・・・」を再読した。村上が訳するアメリカ文学は、情景描写が物語の重要なカギを握るので、きちんと読んでいないと訳が分からなくなる。残念ながら今回もきちんと把握できたか?となると、自信がない。いずれにせよ、「ライ麦・・・」と「グレート・・・」だけは、物にしたいものだ。

 

「博物誌」 ルナール著 岸田国士訳 ルナールは「にんじん」で有名な文学者だが、フランスではこの本の様な短文な随筆で知られるという。 私ががよんだのは、昭和53年 32刷 の文庫本である。当時、私は大学の医局に勤務しておいた。生物や山などの自然が好きで、題名につられて買ったらしい。ろくに読まず、放ったらかしたらかしになって、表紙が薄汚れた状態で見つかった。全体は、ショートエッセで構成されていて、各段ごとにルナールの簡略化されて挿絵が載っている。自然に対する温かいまなざしが感じられた。当時の、フランスは農地が広がる自然がたくさん残っていたらしい。名前は知っているがまだ見たことがない鳥が沢山出てきて、改めて調べてみたくなった。猟銃を手にして、5~6時間も鳥たちとの駆け引きを楽しみながら、自然を歩き回れる境遇がうらやましかった。

「朝のあかり」 石垣りん著 石垣は学校の教科書にも載るほど有名な詩人だそうだ。この本は散文と詩で組み合わされいて、読みやすいエッセー集である。私は詩集と言うものはほとんど読まないので石垣の名は知らなかった。石垣は昭和初年ごろの生まれで、戦時中に高等小学校を出て東京丸の内の銀行に就職した。彼女は家庭の経済をささえながら勤務し、詩を書いてきた。昇進を望まず地道に勤務することを生きがいにしてきた。ただ詩を書く時だけは、エリートではない働く女性としての精神性を 矜持した。その心意気が頼もしい。そして働く女性としての庶民性、さらに心の温かさは読後に爽やかな感想を残した。

「ロバの スーコと 旅をする」高田晃太郎著 ロバの背に荷物を載せて徒歩旅行をする話である。イラクとトルコとモロッコを徒歩で旅した記録である。ロバを連れて旅をすることで、集落の村長や警察や軍隊に疑われ散々な目にも合うが、かえって村人に親切にされ施し物まで与えられたりする。それぞれの国の事情が垣間みられて楽しい。旅をする意味で沢木耕太郎の「深夜特急」が、動物を飼うと言う意味で内澤旬子の「カヨと私」が取り上げられていた。どちらも最近わたしが読んだ本で「類は友を呼ぶ」だなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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