徒然なるままに 36. 新聞を読んで・その10 小澤征爾さんの死去に想う
2024年2月12日
小沢さんが亡くなりました。新聞の各ページは小沢さんの記事で溢れています。本当に惜しい方を亡くしました。しかも満88歳で、もっとずっと指揮をしていただきたかったです。新聞の写真で若いころのお姿を拝見すると、ふくよかなお顔で体格も良く、体に力がみなぎっている印象です。学生時代はラグビーをやっておられたそうです。カラヤンに師事しバーンスタインに認められて大指揮者になられました。しかし晩年、食道がん、転倒して骨折、肺炎などで度々療養されています。
小沢さんの健康について、私ごときが解説するのは烏滸(おこまが）しいことです。以下に私が書くことは、決して小沢さんを貶める意味ではありません。もっと小沢さんが元気な老後を送って頂きたかったという願いを込めて、書いているのでその点をお許しください。最近の小沢さんはサルコペニア、フレイルだったと思います。「院長ブログ 2024.1.19 フレイルとサルコペニア」を見て下さい。
フレイルの予防には筋肉を鍛えることと、タンパク質をしっかり食べることが重要です。小沢さんは運動は指揮活動で普通の人よりなさっていたと思います。晩年の小沢さんは、気力は充実していたけれど、体力がついていかなかったのではないでしょうか。もしかしたら、蛋白質の摂取が少なかったのではないでしょうか。長野県には、信州牛や信州サーモンがあります。信州に来たら、たくさん食べて頂きたかったです。長野県民の平均寿命が長いのは、昔から蛋白質の摂取量が多かったことが挙げられます。牛や馬は宗教的に食べなかったけど、それ以外は良く食べていました。蜂の子、イナゴ、カイコの蛹、川魚(佐久のコイ、田鮒、千曲川のつけば、諏訪湖のフナ、ウナギ)。海のない長野県でしたが、富山や糸魚川からはブリ、信濃川経由で鮭が入ってきましした。明治に入ってからは伊那では馬肉を食べました。蛋白源としての大豆も欠かせません。信州みそは大豆から作ります。筑摩山地の「西山大豆」は美味しくて栄養があるので、他県からも買い付けに来るほどでした。
新聞記事には「小沢さんは松本を訪れると名物のソバを好んで食べた・・・」と書いてありました。小沢さんには松本に来られたら蛋白質をしっかりとって頂きたかったです。松本市長さんは県外から大事なお客が来たら、松本(塩尻)名物の「山賊焼き」を食べさせてあげて下さい。
小沢さんの死因は「心不全」と書いてありました。報道によれば、小沢さんの心不全の原因は大動脈弁狭窄症だそうです。ここからは私の推測ですが、「フレイルやサルコペニアは心不全の原因の一つであるである」と考えています。心筋のサルコペニアが心不全です。しかし、大学や大病院の循環器専門の先生からは、あまりそのような話は聞きません。最近、心不全の新薬が各メーカーから目白押しです。製薬メーカーの講演会に行くと、心不全パンデミックなどと言って、やたらと新薬を売りたがります。心不全の分類もHFrEF だとか HFpEFだとか言って我々素人を煙に巻きます。私に言わせれば、年寄りが皆高蛋白食を食べれば、心不全パンデミックの一部は解決できると思います。
心臓は筋肉で出来た袋です。筋肉量が減れば心臓の収縮力が低下して心不全になります。一方、筋肉量が減ってそれが線維に置き換われば、心臓の拡張機能が低下して、心臓に戻ってくる血液量が低下するので、やはり心不全になります。心臓は広がる時は広がり、収縮する時は収縮しなければ、ポンプの役割を果たせません。心不全患者にオーソドックスな薬剤療法と、高たんぱく質療法を併用するのは、何ら差し支えありません。１錠何100円もする新薬も大切ですが、そのお金で肉や魚を沢山食べる方が、心不全の予防と治療に効果的だと思うのですが・・・・。私は、お年寄りの心不全患者さんに高たんぱく食を進めていますが、実際に良くなる人がいます。年寄りに「肉や魚をたくさん食べろ」と言うと、「そんなもの食べれない」と拒否されますが、そういう人に限って心不全になります。
三浦雄一郎さんは、歳をとってから心房細動にもかかわらずエベレストに登頂されました。毎日ぶ厚いステーキを食べて、足に錘(おもり)をつけて山道を歩いたそうです。いまのアスリートはプロテインを日常的に飲んでいます。
私は78歳になりました。蛋白質摂取と運動は日ごろから心がけています。今シーズンもスキーをやることができました。標高差250m、長さ１km のゲレンデをノンストップで、連続６本滑ります。家に帰ってからとへとへとになりますが・・・）
