一の瀬のシナノキ
2020年6月30日
志賀高原一の瀬の雑木林の中にあります。樹齢800年、幹周囲 8.4m、樹高 23mの大木です。根本近くの樹肌はごつごつしており、高さ4ⅿくらいから上の樹肌はすっきりしています。昔この位置で切られ、そこから萌芽した枝の一本が太く伸びたのでしょうか。しかし、その主幹も20mくらいの高さですっぱり切れています。おそらく雷に打たれたのでしょう。いま山ノ内町の天然記念物に指定されている大木にも、こんな受難の歴史があったのです。(上記の文章の一部は私の想像で書きました)
シナノキが萌芽するかどうかは分かりませんが、萌芽現象はブナ科の樹木ではよく起こります。コナラは根元近くで切っても、そこから萌芽して十数年後にはコナラの林が復活します。ブナではある高さで太幹を切ると、そこから若枝が何本も萌芽します。萌芽した若枝は薪にするため切りとられ、さらに新らたな若枝がそこから萌芽します。若枝が沢山萌芽した樹形のブナをアガリコと呼びます。
江戸時代、この辺りの山は松代藩の御料林(鷹の巣山)で、麓の沓野村の村人だけが入山を許されていました。村人は立木や根曲がり竹を採取する事が許され、山の保護、管理を行ってきました。村人は切ったコメツガやオオシラビソで箸を作り、根曲がり竹で笊(ざる)や籠(かご)を作って生業としました。このシナノキも樵(きこり)たちの興味を引いたと思います。しかし、根元から切り倒すにはあまりに大きすぎて、今に残ったのかもしれません。