ハリギリ
2021年5月6日
鴨ヶ岳の山頂近くにハリギリの大木があります。ハリギリは土地の肥えた山地に多く、特に北海道では大木になります。材は「栓(せん)」と呼ばれ、細工物や菓子鉢などの材料になります。ろくろ細工で削り上げて漆を塗れば、お椀などの食器にもなります。昔から、栓をはじめとする細工物の木材を求めて、木地師(ろくろ師)が全国を漂泊していました。中世以降は山中に集落を築くようになり、長野県境に近い新潟県糸魚川市の姫川の源流域にも木地屋という名前の集落があります。近年に入って、木曽や輪島などで漆塗りの食器が定住者により生産されるようになりました。古代は箕(み)作を専門とする山窩(さんか)や木地師、傀儡(くぐつ)師、旅芸人、あるいは熊狩りのマタギなどの漂泊の民が国内を経巡っていたことに、私は大いなるロマンを感じます。
話がそれました。ハリギリはタラノキ、コシアブラなどと同じウコギ科の植物です。ハリギリの枝や幹には鋭い棘が生えているので見分けがつきますが、若芽をてんぷらにして食べると美味しいです。ただ、ハリギリは採るのに適当な大きさの木が少ないので、意外にマイナーです。むしろ、ウコギはその辺の藪に当たり前に生えているので、知っている方は食べてみてください。さっと茹でて、塩でまぶしてご飯と食べると美味です。